公園の子どもたち

公園とつくりだす、子どもたちのチカラと個性  さちこ先生の場合①

 さちこ先生は、流山おおたかの森駅にほど近い保育園で現在勤務している保育士さんです。

 さちこ先生が保育士としてスタートした保育園は、できたばかりのオープン園。園児の数は約180名・保育士は50人在籍する大規模園でした。一から保育園をつくり上げていく仕事は、保育士1年生のさちこ先生にとってかなり大変で多くの悩みも抱えたものの、貴重な学びと成長も感じられた日々だったようです。

木の上を指さす

ひとりひとりと、向き合う

 保育士になって3年目、自分で保育の方向性を決めていく機会を得たさちこ先生は、『自分にとってやりたい保育はなにか』について自ずと向き合うようになります。
 本当に子どもたちひとりひとりに向き合った保育が出来ているか。
 自分は何がしたいのか、何が出来るのか。
 日々保育をしながら考え続けたさちこ先生のなかで、子どもたちひとりひとりの成長に合った関わりや保育をしていきたいとの思いが明らかになっていきます。

子どもと歩く

 保育士として4年目の2021年、子どものSOSにすぐに気が付き向き合うことが出来る、子どもたちが甘えたい時により添うことができるような規模の保育園に、さちこ先生は出会います。新規オープン園でもあり、いままで経験してきたスキルが活かせる園で、さちこ先生は働くことを決めました。
 さちこ先生はいま、定員62名ほどの園で、子どもたちひとりひとりとの関わりを大切にしながら、活き活きと働いています。その園は流山おおたかの森駅から近く、保護者にとって利便性の高い場所ですが、その保育園には園庭がありません。

 「保育士は、子ども好きなだけでは務まりません。子どもと関わるなかで、ひとりひとりの発達に向き合い、どんな言葉がけをすれば子どもが成長できるか、瞬時に考え行動に移すためのサポート力が必要と考えています。ただ一緒に遊んでいるだけでは、子どもたちの成長の機会を見逃す可能性があります。
 保育士にとって、もうひとつ忘れてはいけない大切なことは、保護者との信頼関係を築くことです。
 私たちの園には園庭がありません。森のまち流山で暮らしているのに、子どもが身近に自然と触れ合える環境にないことを不安に思う保護者さんもいるはずです。私たち保育士は、園に近い公園を有効利用し、子どもたちが自主的に自然と触れあうような機会をつくることを強く意識しています。成長していく上で大切な時期の子どもたちの発育を支えるだけでなく、保護者の方々にも安心して預けてもらえる環境づくりに努めています。」

木の上から飛ぶこども

あえて、遊具がない公園へ

 さちこ先生の保育園では、年間計画の一つとして、子どもたちが1日3キロ歩けるようにしようという目標を立てています。歩くチカラや自分のペースで歩く感覚を身につけながら、子どもたちが外に出て遊びたくなるような気持ちになってもらえるよう、日々工夫を凝らしています。
 「公園での活動では、わたしたち保育士が遊びをただうながすのではなく、子どもたちが自分で遊びを考えたり、見つけられるように心がけています。だからあえて、遊具が少ない公園や遊具がない場所を選んで出かけるようにしています。
 たとえば、十太夫近隣公園は、夏には子どもたちが夢中になるほど昆虫がいる魅力的な公園です。公園中にたくさんのセミの抜けがらが落ちているので、『抜けがら拾い競争』をするだけで子どもたちの体力アップにもつながります。また、抜けがらの落ちている位置と木との関係を子どもたちが体感することで、自然の道理を学ぶこともできます。
 秋になると、落葉樹から木の葉が落ちるにも関わらず、公園のお掃除が充分に行き届いているので、十太夫近隣公園は落ち葉も木の実も何もない公園に変わります。
何もない公園になったとしても、わたしたちは、十太夫近隣公園に行くことにしています。」

木を触るこども

何もない、ところから

 公園には何もないことを知った上で、さちこ先生たちは、出かけます。
 季節によって植物は変化をすること、いつでも葉っぱがあったり木の実がついていたりするわけではないこと、季節によって特に秋冬には姿が変わることを体感してもらうためです。
 「公園に到着したときは『葉っぱもない、抜け殻もない、木の実ない、何もない!』いつもと違う状態に、子どもたちは戸惑います。わたしたち保育士は、子どもたちに遊びを提案せずに、自分たちで動き出すまでじっと様子を見届け、『どうしようか!?』と声がけします。
 この環境のなかで何をするかを考えた子どもたちは、気持ちを切り替え、切り株を見つけジャンプをしたり、鬼ごっこをしたり、それぞれの遊びをはじめました。遊びの途中で、3歳児のひとりが自分の被っている帽子をしっぽに見立てズボンに挟み『しっぽ取りしようよ!』とお友だちに提案すると、『いっしょにやりたい!』と1人から2人、2人から3人とだんだん仲間が増えていき、2歳児も職員も加わって10名ほどが参加するしっぽ取り遊びに進化していきました。」
 公園で自発的な遊びへと子どもたちをアプローチし続けることで、さちこ先生の保育園に通う幼児は、1日3キロ歩けるようになってきているようです。           (つづく)

走る子どもたち

②へ続く

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