株式会社新閃力の代表取締役社長の尾崎えり子さん。2010年に都内から流山市へ転入。2014年には、流山市のプロモーション「母になるなら、流山市。」のモデルをつとめられました。2児を育てながら起業し、市内にシェアサテライトオフィス「Trist」2か所を開設。市主催の女性向け創業スクールの講師でもあります。ICT授業作家としても「オンライン修学旅行」などを企画し、その活躍は流山市だけにとどまらず、多数のメディアにたびたび取り上げられてきました。尾崎さんが流山市でつくってこられたものは、市のブランド資源のひとつになりました。
その尾崎さんがこのたび、全国市の中で人口増加率1位の流山市から、人口約1500人の村にお引越しされます。卒業記念として、流山市でのこれまでと、これからの展望について聞きました。
起業、創業が文化に
子育てをしている私が事業をしていると、育児家事の傍らで趣味程度にやっていると思われたり、謝礼程度の金額で契約を提示されることがありました。また創業当時は、首都圏の流山市でさえもまだ女性が地域で起業、創業するケースはそれほど多くはなく、「起業してるなら保育園の枠を空けてほしい。」という声も聞くことがありました。
流山市は、共働き子育て世帯の住民誘致を行っていてその層が増えていますが、結婚や育児、その他の理由で仕事を辞め、知識やスキルを持ちながらもう一度働きたいと望む女性もいます。これは私の経験ですが、都内での仕事を辞めて市内のファーストフード店やコンビニエンスストアの面接に行ったときに「尾崎さんは、お店の経営がしたいのですか?」と聞かれ、採用されず落ち込みました。それを友人に話したところ「履歴書には、これまでのキャリアをすべて消さないと採用されないよ。」と言われました。せっかくのキャリアを消さないと地域で働けないなんて。
2015年に流山市の女性向け創業スクールが始まり、講座内容の企画と講師をつとめることになりました。創業スクールといっても、事業計画の細かい作り方や資金調達方法を詳しく学べる場ではなく、市内の事業者さんへ営業に行ったり、ウェブサイトやチラシを作成してみたり、毎年企画を変えて超実践型としました。私は講師ではありますが、創業という点ではスクール生のみなさんより少し先に行動を起こしただけであり、私の経験が創業の王道でもありません。そのため、私から提示するのではなく、スクール生のみなさんが行動することで、自分の創業スタイルをつくっていくことにこだわりました。これまで、150人を超える受講があり、卒業後はそれぞれのスタイルで活動をされています。
女性向け創業スクールは7年目になりましたが、今年は募集から2日の最速で定員が埋まりました。また、スクール生は年齢やこれまでの経歴も様々で、流山での起業、創業が文化として根付いてきたのかもしれないと感慨深い気持ちです。
ICT授業作家として
私は、親の文化資本に寄らない経験と人脈をすべての子どもたちが享受できる社会をつくりたいんです。実は、一番やりたいことは教育分野にあります。公教育であらたな取り組みができれば、横展開できるのではと考えていて、最速で実践できる場を探していました。
そこで、流山市で社長をしながら奈良県生駒市の教育改革担当としてリモートも使いながら働き、2021年からは流山市ICT教育推進顧問をつとめています。最近ではICT授業作家として教育分野の講演などからもオファーをいただくことが増えています。
2020年8月には、コロナウイルス感染症の流行で修学旅行が中止となってしまった小学6年生向けに、「Trist」にて「空飛ぶ教室」を開催しました。これは、航空会社などにも協力いただき、ミステリーツアー仕掛けをしながらオンラインで海外とつないで子どもたちが交流する企画です。おそらく、オンラインで修学旅行のような企画をしたことが全国で初だったので、多くのメディアに取材していただき、そこから他地域の先生からも「うちの地域でもやってみたい!」と実践される流れができました。
ICTはあくまで手段のひとつですがうまく活用すれば、距離を超えて今までは話せなかった人やものに触れることができるのが魅力です。教育では、まだまだ企画したいことがたくさんあります。私は独自性や面白い企画をつくる強みを持っていると思っています。それらを形にするために行動するのは、わくわくしかないです。
これから その先へ
これは言っておきたいのですが、私は流山市から引っ越しますが、決して流山が嫌になったわけではありません。むしろ、ここでかけがえのない友人に出会い、成長する流山市とともに自分の事業を拡げていくことができて、得難い経験が数多くあります。
私は、足りないこと、欠けていることに惹かれる傾向があり、知らない場所や人の中で違う挑戦をしてみたいと考えています。根拠があるわけでもないのですが、これからの自分に自分で期待しています。また5年後にはどこで何をしているかもわからないほど、可能性が開けているように感じていますが、様々な経験を持ってまた流山市で何か新しいことができることも楽しみに思っています。