しいたけが嫌いだった人が「入江農園」のしいたけを食べてみたその日、しいたけ栽培をはじめようと思った。「入江農園」のしいたけは、そんな逸話をもつ、数多くのファンを抱える流山産のしいたけです。
1600 年代、江戸時代から流山市大畔に居を構えていた記録が残っている入江家。長く一般的農業を勤めてきましたが、1989 年、平成元年当時では珍しいしいたけ菌床栽培をはじめました。30 年以上に渡り栽培方法を模索し、よりおいしいしいたけづくりを日々目指しています。
「おいしいしいたけをつくるためには、生育環境が重要です。入江農園のしいたけは、30年以上栽培し試行錯誤してきたことで、自然の山に近い環境がハウス内に再現できているのがおいしさのおおきな要因です。
しいたけは、人間と同じように酸素を吸い二酸化炭素を吐き出すので、新鮮な空気が必要です。しいたけへの風の入れ具合によっても、まったく味わいが変わるので長年の経験と勘が必要となります。奥深く、よりおいしいしいたけをつくり続けるため、今後はデータを集め分析するIT化も進めたいと考えています。」
ビールづくりから、しいたけづくりへ
「入江農園」の入江匠さんは、大学時代に有機農業や環境、サステナブルな取り組みについて学び、農業をやりたいと思っていました。しかし、卒業後クラフトビールの醸造会社への就職が決まったことで、静岡県や栃木県でビールづくりに勤しみました。
入江家に婿入りし流山に住むことになった入江さんは、学生時代に思い描いていた農業に従事することになります。ビール醸造も農業も、職住接近。自宅と勤務先が近く、1 日の時間の使い方も比較的自由なのが、入江さんには合っているようです。
入江さんはしいたけの魅力をより広めるため、毎年 11 月ごろ柏市の飲食店 The Life と合同主催で1年に 1 度の秋の収穫祭イベントを開催しています。昨年は、しいたけバーガーやしいたけタコスなど、しいたけ三昧のフルコース料理を振舞いました。一度食べてもらえればそのおいしさと違いに気づいてもらえるはずと信じ、入江さんはしいたけの普及活動にも努めています。
そして、またビールづくりへ
入江さんの活動と夢は、しいたけ関連にとどまらない。
「アメリカではあえてアクセスが良いとは言えない農園にワインやビールの醸造所をつくり、地域にあらたな価値を生むと同時にその地域の自然環境を保護する事例があるようです。
就職してからずっとやってきた、ビールづくりはこれからもやり続けたいこともあって、新規事業として農園にクラフトビール醸造所をつくる夢をもっています。流山にも、あたらしい拠点がつくれればとプランを思い描いています。
今年の夏は、農園のはっさくを使ったはっさくビールを県外の醸造所でつくってみました。はっさくの香りが拡がるキレのある爽やかなビールができました。お客さんの目に留まるようビールラベルはデザイナーに作成してもらい、市内の酒店や飲食店で販売した結果、うれしいことに完売することができました。」
しいたけづくりもビールづくりも、入江さんにとってはやればやるほど奥深く、チャレンジしがいのある仕事のようです。
「今年の 12 月には、農園に生えているクヌギの木を使用したシャンパンのようなビールを計画しています。ビールをつくる上で、もちろんおいしさにはこだわりますが、これからも流山産の『なにか』を使うことにもこだわっていきたいと思っています。」
流山の森とみどりと、生きる
「流山には、住宅だけでなく農地も森もある。都心へのアクセスも良いから住みやすい。農園の周りには、ふくろうや野うさぎなど都心では見られない生き物もやってきます。流山には木々もあるので、ウッドビールをつくるときには流山の木を使うことにトライしていきたいです。これからも流山の自然を活かした試みを続けていきたいと思っています。
だからこそ、『都心から一番近い森のまち』という流山で森や自然を守っていきたい。わたしの行動が、流山の環境の生態系を維持していくきっかけになれればと考えています。」