小枝さんの写真

木のおもちゃで、人とまちと森をつなぐ

おもちゃとの出会い

結婚を機に都内から流山に引っ越してきたときは、夫婦共働きで、私は電機メーカーの宣伝を担当していました。日々充実していましたが、とても忙しく家庭のことが十分にやれていないという申し訳なさと、当時は、男女雇用機会均等法の成立により女性へのキャリアアップを示唆する動きもありましたが、自分のライフワークをあらためて考えるきっかけとなり、13年間続けていた仕事を辞めて家庭に入ることに決めました。
長女が生まれ、子どもとの接し方に悩んでいたときにNPO法人日本グッド・トイ委員会(現NPO法人芸術と遊び創造協会)が主催するおもちゃインストラクター養成講座を知り、資格を取得しました。おもちゃについて学び続けるうちに、元々子どもの発達心理に興味があった私は、どんどんおもちゃの魅力にはまり、子どもがどう反応するのか研究心が湧いてワクワクしていたのを覚えています。その後もおもちゃインストラクターとして、ボランティアで活動を続けていました。

仕事を再開し、木のおもちゃの魅力を知る

専業主婦として8年ほどが過ぎ、長女が小学生、次女が幼稚園に上がったころ、家庭ではできないことをしたい。という思いがふつふつと出てきました。そんな時に、生命保険の勉強に誘われ興味を持ち、保険の営業として仕事を再開しました。初めての営業職で、働く人が対等で実力主義な職場環境に、出産前に働いてきたこれまでの常識をみごとに覆されましたが、営業の仕事を通して人とのかかわりの難しさや面白さを経験できたことは、今の私の活動の糧となっています。営業職を続けながらも、おもちゃや遊びを通じて『人の笑顔が見たい』という気持ちは変わらず、さらに、おもちゃの専門性を高めるためにおもちゃコンサルタントの資格を取り、そのご縁で東京おもちゃ美術館のスタッフとして働くことになりました。東京おもちゃ美術館では、0歳~2歳までの赤ちゃんが遊べる【赤ちゃん木育ひろば】を担当しました。そこで、木のおもちゃに触れる赤ちゃんのキラキラ光る瞳とそれを見守る親御さんの笑顔を見た時に『親子の絆をつなぐ木のおもちゃの良さを多くに人に知ってもらいたい。』と考えるようになりました。子育てにおいては、乳幼児期にこそ豊かな感性を育むために自然の木に触れて、遊び、木のぬくもりや香りなど木の良さを肌で感じてもらいたいと思っています。木のおもちゃ(特に積み木)はシンプルだからこそ、新しい発想が生まれ、創造力が無限に広がっていきます。

人のご縁に導かれて

その後、知人から商社で働かないかと声がかかり、さらには家庭訪問型のベビーシッター登録の誘いを受け、昨年春にチャイルドマインダーとして独立しました。振り返ってみると、私は人とのご縁で仕事や、やりたいことがつながってきたように思います。
シッターとしてお家に訪問すると、「木のおもちゃは家にあるけど、子どもとどうやって遊んだらいいのかわからない。」という保護者の方の声を聞くこともあります。その時、お話をさせていただくのは、おもちゃ作家さんのお話です。木のおもちゃ(特に国産品)は、高額でなかなか手が出せない物の一つと考えられていますが、むしろ『一生物である』とも言えます。キズがついたり、欠けてしまったり、少し色が悪くなっても、木はずっと生きていて、ヤスリをかければ何度でも、香りも木肌もよみがえります。≪大好きなお母さんが、一つの木のおもちゃを大切に扱う姿や一緒に笑顔で遊んでくれたことをお子さんの心にいつまでも残して欲しい。≫おもちゃ作家さんが伝えたい事はその想い一つだそうです。
30年、40年長い年月をかけて成長してきた<木の命>を大切な子どもに【木のおもちゃ】としてつないでいく。末永く大事に使ってほしい。その想いを伝えるのが私の役目だと思っています。そして、その想いをみなさんにお伝えする場所が『おもちゃの広場』だと考えています。

千葉県木育コーディネーター資格を取得し、創業スクールにも

おもちゃコンサルタントの仲間と一緒に千葉県が行っている木育コーディネーター養成講座を受けました。木育コーディネーターで木のおもちゃに特化して活動するのは、流山市では、今のところ私だけです。昨年末(2021年)に市の女性向け創業スクールにも参加し、市内での知り合いも増えました。
その後、おもちゃコンサルタントのつながりから、『おもちゃの広場』をやらないかと声がかかり、今年3月に流山エルズにて『グッド・トイカフェ』という名前で、初めてのおもちゃの広場を開催しました。また、7月には『ちばの恵みの木のおもちゃ広場』(市民活動団体公益事業)を開催し、木育コーディネーター考案の千葉県産の木のおもちゃ(使用材ːサンブスギ)を流山市で初めて披露しました。当日は、サンブスギの積み木が崩れる音が会場内に鳴り響き、参加者全員で大いに盛り上がりました。

人とまちと森をつなぐ

6月にNPO法人流山おやこ劇場の<みんなのおうち>をお借りして『多世代交流おもちゃの広場』を開催しました。子どもだけでなくシニアの方々にも楽しんでもらえました。シニアの方々にとっては、[おもちゃは子どもの遊ぶ物]と遠慮される方もいらっしゃいますが、実は、手指や脳を使うことが認知症予防に効果がある事は数々の研究により立証されてきており、<アクティビティ・トイ>としてのおもちゃの存在価値が見えてきています。多世代をつなぐツールとしてこれからも必要性が高まっていると感じます。また、7月の「ちばの恵みの木のおもちゃ広場(木育広場)」では、保育系の大学生にスタッフとして加わってもらいましたが、木のおもちゃを介して見知らぬ小学生と大学生の間に新しい交流が自然と生まれました。保育園や学校とは違う子育て支援の形があることを学生にも知ってほしいと思ったことからの試みでしたが、来場者の方々からの予想以上の喜びの声があり、とても嬉しかったです。

【木のおもちゃ】を通じて、人と人・人とまち(コミュニティの場)・人と自然(森林との共生)がつながり、ともに喜びがあふれる社会をめざしてこれからも活動を続けていきます。

これからの明るい未来を創る子どもたちのために、そして、すべての人が健康で豊かな心を持ち続けていくために、日本の豊かな森林環境を残していく活動の一助となれば嬉しいです。

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