料理講師、栄養士、製菓衛生師のさとうえみさん。流山の白みりんを使ったスイーツなどの開発や、特別支援学校「流山高等学園」福祉サービスコースで授業をされています。
特に夢や野望を持っていたわけでもない専業主婦だったと語るさとうさんですが、独立するに至るまでには、様々な人との関わりやきっかけがありました。
「母になるなら、流山市。」で勝手に引け目を感じていた
大阪出身のさとうさん。結婚を機に縁のない流山に引っ越ししてきましたが、「子どものいない自分に勝手に引け目を感じていて、なんとなく外に出づらくなっていました。」といいます。
そんなときに、のちにmachiminを運営する手塚純子さんと出会い、白みりんの発祥の地である流山で、その魅力を再発見しようという地域活動があるのを知りました。「自分が得意としているお菓子をつくるのは楽しいし、まあ良いか、という程度で誘われるままに参加し始めましたが、知り合いが増えて自分のつくった白みりんスイーツに、美味しい!と言ってもらえ、輪が広がっていくワクワクにはまりましたね。」白みりんは、和風のイメージですが、実は洋食やスイーツにも使える万能調味料です。その白みりんの奥深さにも魅力を感じ、気づけば企業とコラボして商品開発をしたりしていました。
子育てをすることで、「働く」を意識する
待望の子どもを授かり、育児に専念する毎日でしたが、観光案内所兼コミュニティスペースのmachiminに、大量のみりんお土産セットの発注が入り、久しぶりに手伝いに行きました。出産してはじめて子どもとひととき離れて働き、スタッフの人たちと一緒にお土産セットを協力しながらつくっていくのは、思った以上にさとうさんにとって元気が出る体験でした。
さとうさんは、料理講師であり、特にお菓子は専門です。でも、その技術を高めることを追求するよりも、食を通じたコミュニケーションを生むことに喜びを感じることに気づきました。「作ってくれてありがとう」「食べてくれてありがとう」そんなコミュニケーションが毎日を彩ったらいい。好きなこと、やりたいことの整理ができたといいます。保育園に入園するなら今しかない、というタイミングが来て、申し込み締め切り2日前に急に独立を決めました。
点と点が線になっていく
原材料の98パーセントが白みりんのマシュマロ、みりん生キャラメル、みりんとドライフルーツたっぷりのシュトーレンなど、さとうさんの開発した白みりんスイーツは「え?!これ本当に砂糖が入っていないの?」「味わいが深くて美味しい!」とすぐに完売する人気です。そのため、これまでテレビ、新聞など多くのメディアに取り上げられています。
でも、さとうさんの活動はスイーツだけに留まりません。毎日のごはんづくりが負担に感じることがあったときに、ちょっとした料理のコツやお手軽レシピを「これやってみ!」シリーズとしてSNSで発信したところ、たくさんの反響があり、流山市が共催する「森のマルシェ」イベントのオンライン企画とコラボ、動画やレシピ冊子が作成されました。
また、コミュニティスペースのmachimin2では、「とうかつ草の根フードバンク」や地元の農家さんなどから食材や調味料を提供してもらい、“今あるもので作れるご飯”を週1回子どもたちと作り続け、レシピを開発しました。子どもたちへ、自分でご飯を作ることは実験のように楽しいし、誰かを喜ばせることもできることを伝えたいと、炊飯器ご飯のレシピ集「machimin2 研究手帳 お米で実験!」もイラストレーターのはしもとさんと一緒に作成しました。
私はこのために料理を学んできたんだ!
2021年から特別支援学校「流山高等学園」で授業をすることになりました。学校には広々とした厨房があり、生徒さんたちは、併設のnカフェベーカリーで販売するパンやクッキーを作っています。
さとうさんは、みりんの歴史や健康効果、みりんを使ったスイーツを授業で伝え、販売できるような新商品を考えてみる話をしました。生徒さんは、いつも作っているクッキーやパンとは違う作業に戸惑いながらも、工夫を凝らすのを楽しむ様子が見えたそうです。「価値あるものを生んでその対価をもらうことが、誰にとっても当たり前のことなのだと自信を持ってほしい」と、さとうさんは思っています。
まちから学校に入り、学校がまちに開かれ、卒業した生徒さんたちがまちに出てくる、そんな夢のような世界がすぐそこに見える気がして、さとうさんは、「私が今まで料理を学んできたのは、実はこんな世界を見るためだったのではないか」と、今日も料理を通じたコミュニケーションを生むべく活動しています。
https://www.sato-emi.com/ さとうえみさん