高橋さん

72歳で女優デビュー 森の図書館勤務の道子さんの挑戦

 2021 年 7 月から 9 月に放映された TV ドラマ「痴情の接吻」(ABCテレビ)は、ドラマのヒロインが市立図書館司書という設定、明るく広々とした館内環境、窓外にみどりあふれる光景、職員の協力的体制などの好要因により、流山市立森の図書館が当ドラマの主要ロケ地として選出され、流山市フィルムコミッションの撮影支援のもと、撮影が行われた。
 このドラマでは、演技経験のない森の図書館勤務の司書、放映当時 72 歳の高橋道子さんが女優デビューするサプライズが起こった。道子さんは、ドラマ内でも実務と同様、図書館司書の同僚役として出演した。

高橋さんと助監督

 「休館日での撮影だったので、当初は館の鍵の開け閉めに行くだけという役割でした。でも、助監督さんから『カウンターで本を貸し出すときは、どんな風にしますか?』とか聞かれ教えているうちに、他の司書役の役者さんと同じ衣装を着させられ、いつのまにか出演していた感じです(笑)。」

図書館内での撮影1

 森の図書館の勤務歴 13 年の道子さんは、この図書館で最も長く勤めているベテラン司書。結婚後、流山に在住すでに 47 年、2 男 1 女を育てたお母さんでもある。
森の図書館に勤務する以前にも、中央公民館や中央図書館でのパート勤務、青少年相談員、民生委員・児童委員のボランティアなど地域活動をしていた道子さんは、10 年前から流山文化のまちづくり実行委員会に委員として現在も参加している。

原動力は、好奇心と向学心

 道子さんは、60 歳の記念として図書館司書補、その 4 年後には図書館司書の資格を所得している。

「森の図書館のパート募集に応募した時に、司書資格を取るために大学に通いました。当時最高齢受講者と冷やかされながらも、10 代の若い方と一緒に勉強したのは良い思い出です。
 2002 年から 1 年ちょっと中央公民館でパートをしていた頃、ある方から『生涯学習社会ではどこを出たかではなく、何ができるか』と言われたことが心に響いて、いくつになっても、楽しみながら勉強することを意識しています。」

図書館外での撮影

 「17 年くらい前に、公民館で働くためパソコン操作を覚える必要があって、人指し指 1 本でキーボードをたたくところからはじめました。それから 2 年たって、趣味も兼ねブログに挑戦しはじめたところ、現在も続けています。

 ブログでは例えば『森の図書館で撮影』と情報だけのせても面白みがないので、過去図書館で撮影があった映画やドラマ、書籍を調べて、内容をふくらませることで少しでも読者の興味が拡がってくれるよう努めています。そうやって調べていくうちに、別の興味につながる新しい発見もあったりします。
 いまではブログを書くことが、生活の一部になっています。」

森の図書館の最年長スタッフとして

 道子さんは現在も森の図書館で、自分の子どもより若い館長やスタッフと共に、最年長現役スタッフとして働いている。
 「森の図書館は、みどりに囲まれ、日常の喧騒から離れ、静かに落ち着くことができる図書館です。この図書館の持っている雰囲気が心地よくて、長く勤めさせていただいています。また、この図書館には展示スペースがあるので、読書普及につながる展示やイベントを行っています。市民の方々と一緒に社会の問題を考えながら展示物やイベントをつくれることも、新しい出会いや発見があっておおきな楽しみのひとつです。
 仕事でもボランティア活動でも、引き際は大事だと常に考えていますが、司書の不在があってはならないので、若いスタッフが幼いお子さんや家族の世話などの都合で仕事を休まなければならないときに出勤できる『便利なおばさん』になれたらいいなと思っています。」
 森の図書館長の川島さんは、地域とともに歩む図書館にとって、地域の情報をあつめ、ニーズを掴み、発信していくためには、地域とつながりが深い道子さんのようなスタッフは貴重な存在であり、道子さんにはできる限り長く勤めてほしいと願っている。

女優になるなら、流山市

  TV ドラマ「痴情の接吻」の出演は、道子さんにとって思い出深いものになったようだ。
「司書役の役者さんからカウンター業務での所作を聞かれることも多く、自分も一緒にドラマをつくっているようなやりがいがありました。
 最終日の撮影でも出演することになり、渋谷での撮影に出向きました。図書館内での撮影では基本いつもやっている司書の業務をやれば問題はなかったのですが、図書館から離れての撮影はちょっと気恥ずかしくて落ち着かない気持ちにはなりました。でも、いつもの自分とはちょっと違う俳優さんの気分にすこし触れられた経験はとても新鮮で、キャストやスタッフの皆さんと最後に記念写真を撮れたこともいい思い出になりました。

高橋さんの笑顔

 流山市はドラマや映画の撮影がたくさんあり、出演できる機会が多いまちです。『母になるなら、流山市。』もいいけど、これからは『女優になるなら、流山市。』ってキャッチフレーズでもいいかもしれませんね。」
 道子さんは、ちゃめっ気たっぷりの笑顔で笑う。

森の図書館  http://www.subaru-shoten.co.jp/tosho/mori/

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